PVC・NSVTは安全か?
症例は70代男性、虚血性心疾患に対してPCI術後、今回は右中大脳動脈のアテローム血栓性脳梗塞で入院中 でリハビリ転院待ち。
せん妄への連日の対応でストレスが溜まっている看護師さんより、
「先生、〜さん何度も何度もPVCでモニターが鳴るんです。様子見でいいですか。指示ください!」
モニター心電図を確認すると確かにPVC〜NSVTが何度かでているようだ・・・ベッドサイドのエコーで見る限り心機能は悪くない。
(研修医の頃はPVCとかNSVTって症状ない限り様子見でいいって習ったような。。でも本当にそれでいいんだろうか。。冠動脈疾患もあるしなぁ。怖いなぁ。。。)
臨床的疑問:PVC・NSVTは安全か?(背景疑問)
背景疑問である。
・PVC〜NSVTはどのような時にVT/VFのリスクとなるのか
・PVC〜NSVTは心不全のリスクとなるのか
・上記を防ぐために予防的治療を行うべきか。
・薬物的治療はあるか。
教科書的知識を復習。
・周期的なPVCは自動能によるものでそんなに怖くない。
・不規則な場合、心筋細胞内の筋小胞体からカルシウムがリークすることによって生じる(triggered activity)。心室の心筋に障害がある(心不全)ことを示唆。
・V1が左脚ブロック型なら右室、逆なら左室
・Ⅱ、Ⅲ、aVf(下から見た)のQRSが上向きなら上からきてる(流出路から)、逆なら心尖部から
・RVOT起源でなく、NSVTで、形も変わっていくようなPVCは危険
AHAの2017年のガイドラインをみてみると
・PVCsは12誘導で見ると頻度は少ないが、ホルターなどで長期間モニターすると50%の人にみられる。 2分間のモニタリングでPVCが見られる人では虚血性心疾患や死亡率のリスクが上昇していた(ARIC研究)12誘導で1波形、もしくは1時間で30発以上のPVCが見られる場合は死亡率や心疾患のイベントと相関していた。心疾患のない人でNSVTじゃなくてもホルター心電図でPVCがみられると死亡率が上昇していた。ARIC研究では脳卒中との関連もある。
・>10,000 to 20,000/日ぐらい頻回に起こる例では LVEF低下と関連していた。そしてPVCをコントロールすることで心機能が改善した。という報告もあり。 (PVC-Induced Cardiomyopathy.)
→PVCは背景の心疾患を示唆する。もしかするとPVC自体が心機能を悪くしているかもしれない(ここらへんは異論があるよう)
続いて ランドマーク研究。CAST studyってなんか聞いたことあるな。。。
CAST cardiac arrhythmia suppression trial NEJM 1991
1991年の研究である。私が1歳の頃である。背景として心筋梗塞後のPVCは予後に関わる。PVCを減らしたらOMI患者の予後が改善するのでは?という最もな意見。
P:1498人の心筋梗塞後の患者
I:フレカイニド、エンカイニド
C:プラセボ
O:心臓死
結果は逆に不整脈薬投与群の死亡が増えたとのこと。PVCは予後に関係するが、PVCを減らしても予後は改善しない。むしろ不整脈薬は予後を悪化させる。
up to date様をみると不整脈薬を使用する場面もあるようだが非専門医としてはこの程度で許してもらいましょう。。
じゃあ他に治療があるかをみると up to date様には「症候性PVCにはβB>CCBがよく効きます。」と記載あり。
JCSのガイドラインをみると波形で治療方針を変えている。
・右脚ブロック型:Caブロッカー(ベラパミル、ジルチアゼム)
・左脚ブロック型:βブロッカー(プロパフェノン)
ここらへんの生理学はわかりません。心筋梗塞が背景にある場合は(いろいろ書いていますが)、症候性or非持続性心室頻拍が重症型(頻拍レートが120~200/分 では5連発以上,200/分以上では3連発以上を重症型と する)の場合には循環器内科に相談した方が良さそうです。(ソタロールやアミオダロンを使うようです)
まとめると
・PVCがある人は心臓が悪いです。12誘導みたいな短時間で見つかる人は心疾患イベントのリスクです。でもそういう人としか言えません。
・かといってPVCをなくすような抗不整脈治療は有害と思われます。
・波形をみて起源を確認しておきましょう。連発する場合は症状を確認。
・症候性は治療介入してみましょう。個人的に使いやすいのはベラパミルかな・・
・OMI患者で、症候性もしくはレートが早い例では循環器内科に相談してみましょう。
結局、この患者では虚血性心疾患既往にあるという事実は変わらないので「SVTへの移行や症候性とならない限りは経過観察」という指示にしました。心臓はやっぱり怖いよね。。